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印刷して、手で書いて、また打ち込む。

生活雑貨とアパレル小物の自社ブランドを2つ持ち、海外メーカー1社の国内代理店もしています。全国の小売店180社に卸していて、従業員25名(内勤15名、倉庫と出荷10名)、年商4億円。情シスはいません。同じ日に、太郎社長と花子社長が、その朝のFAXの束を見ていました。

従業員25名年商4億円取引先180社情シスなしモデルケースの試算

同じ日に、二人の社長が
「今年こそ手を打とう」と決めました。

売っているものも、規模も、社員の数も同じ会社です。違うのは、道具をどこに置いたかだけです。

太郎の会社

売っているサービスを組み合わせて回します。

足りないところは、そのつど外注します。社内にパソコンに詳しい社員が1人います。

花子の会社

自社のサーバを1台持ちます。

足りないところは、自分たちで作ります。ENVIRONを契約し、最初の1本だけ当社が作ります。

1年の手作業時間、12か月ぶん

社内3人が、この業務まわりで手を動かした時間です。3か月目にハブが動いてから、花子の会社だけが落ちていきます。

0125250375500123456789101112太郎 390時間花子 105時間
0125250375500136912太郎 390時間花子 105時間
太郎の会社花子の会社単位は時間/月
太郎の会社売っているサービスを組み合わせる
花子の会社自社のサーバで、自分たちで作る
1か月目

印刷して、手で書いて、また打ち込む

太郎『うちがおかしいんじゃなかったのか』
花子『ここだけ、こっちで引き受けられませんか』
太郎の会社
太郎『うちがおかしいんじゃなかったのか』
ガイドラインの図がプリントされ、「印刷」「手書メモ」「再入力」の箱に赤ペンで丸
390時間/この月の手作業

受注を何とかシステムにできないか、と販売管理の会社に相談した。返ってきたのは、取引先によってはFAXやEDIから置き換えるのが難しい、という話と、1枚の資料だった。流通システム標準普及推進協議会の「流通BMSにおけるWeb-EDIガイドライン」第1.0版、2012年3月。そこに正規の業務フローの図がある。画面に表示して、印刷して、手書きでメモして、自社のシステムに再入力する。不具合の回避策ではなく、そういう流れとして図に描いてある。太郎社長は納得した。うちがだらしないわけではなかったのだ。注文は紙とFAXとメールとエクセルで来て、取引先ごとに様式が違う。今のところ30種類ある。

注文を読んで自社の商品コードに引き当てて入力するのに、1件12分。1日60件、月20営業日で240時間。注文書と納品書の突き合わせが40時間、納品書と請求書が35時間、請求と入金の消し込みが30時間。商品マスタと取引先ごとの品番読み替え表の手入れが25時間。在庫の引き当てと欠品の連絡が20時間。内勤の6名で分担して、合計390時間です。

花子の会社
花子『ここだけ、こっちで引き受けられませんか』
同じ図。「再入力」の箱だけを指でなぞっている
390時間/この月の手作業

花子社長も同じ図を見て、同じ説明を聞いた。納得はした。ただ、図の「再入力」の箱を指でなぞって、ここだけこっちで引き受けられませんか、と聞いた。取引先に紙をやめていただく必要はない。先方の様式はそのままでいい。こちら側だけで受けられるようにする。ENVIRONを契約して、最初に頼んだのが「30種類の様式を読んで、自社の商品コードに引き当てて、1本の受注台帳にする」だった。

契約したばかりで、まだ何も動いていません。作業の中身も時間も、太郎の会社とまったく同じ390時間です。

0時間の差

同じ図を見て、片方は納得で終わり、片方は図の1か所を引き受けました。

ここまでの累計 0時間
2か月目

サーバが来た。まだ何も変わらない

太郎『今年もこの紙の山と付き合うのか』
花子『293万円払って、まだ何も変わってない』
太郎の会社
太郎『今年もこの紙の山と付き合うのか』
FAXの受信トレイに紙が積み上がり、その横で4人が黙って入力している
390時間/この月の手作業

いつもどおりの月。FAXを1枚ずつ見て、商品名を自社のコードに直して、エクセルに打ち込む。1件12分。担当の4人は慣れていて速い。誰も文句は言わない。そういうものだと思っている。実際、同業のどの会社もこうしている。

先月と同じ390時間。この会社では15年これで回ってきました。

花子の会社
花子『293万円払って、まだ何も変わってない』
更地に建物の骨組み。机に30枚の注文書が並べてある
390時間/この月の手作業

サーバが立ち上がり、ログインが1つにまとまった。ただ、業務はまだ何も変わっていない。導入は使う方3名までで50万円だが、共用設備を内勤15名に配ることにしたので、4人目からの設定費が12名で60万円。合わせて110万円になった。保守13万円、伴走支援10万円、最初の1本の前金160万円。この月、293万円を払って、売上は1円も増えていない。伴走支援はProにした。打合せは月1回、一緒に手を動かす回はなし。まずは安く始めたかった。初回の打合せで、花子社長と受注チームの井上さんが、取引先30社ぶんの様式を机に並べて、どこが同じでどこが違うかを紙に書いた。当社は代わりには書かない。

サーバとログインは整いましたが、業務のしくみはまだ1本もありません。手作業は先月のままの390時間です。

0時間の差

この月だけを見れば、花子社長の負けです。293万円払って、作業は1分も減っていません。

ここまでの累計 0時間
3か月目

12分が、5分になった

太郎『1件12分。慣れれば、どうってことない』
花子『読めた。でも、白Tシャツはまだ選んでる』
太郎の会社
太郎『1件12分。慣れれば、どうってことない』
FAXの束を1枚ずつめくりながらキーボードを打っている手元
390時間/この月の手作業

変わらない。1件12分、1日60件、月20営業日で240時間。速い人でも8分はかかる。商品名を見て、自社のどのコードかを思い出して、入り数を数えて、打ち込む。慣れの問題ではなく、判断が挟まるからだ。

390時間のまま。読み方も打ち方も、去年と同じです。

花子の会社
花子『読めた。でも、白Tシャツはまだ選んでる』
画面に受注の行が並び、当てが決まらなかった7行だけが黄色く光っている
250時間/この月の手作業

ハブが動いた。FAXもメールの添付もエクセルも、届いた瞬間に読まれて、受注台帳の行になる。ただし「白Tシャツ」が自社のどの商品コードかは、読み取りの外だ。「1ケース」が何枚かも、紙には書いていない。そこは人に戻ってくる。最初の月、自動で当たったのが68%。残りは人が選ぶ。それでも1件12分が5分になった。1日60件で1日420分、月20営業日で140時間が消えて、240時間が100時間になった。社内チャットとメモも自社サーバに移した。

受注の読み取りと入力が240時間から100時間になり、250時間に。残っているのは3回の突き合わせと、商品マスタと、在庫の引き当てです。

140時間の差

太郎の会社は今月も、1件に12分かけています。

ここまでの累計 140時間
4か月目

上げるのは、負けた気がした

太郎『赤ペン、今月も1本使い切った』
花子『上げるのは、負けた気がしたけど』
太郎の会社
太郎『赤ペン、今月も1本使い切った』
机に注文書と納品書を2枚ずつ並べ、赤ペンで消している
390時間/この月の手作業

注文書と納品書の突き合わせに月40時間。担当の2人が両方を印刷して並べ、赤ペンで消し込む。数が合わないのは月に12件くらいで、そのたびに倉庫へ電話する。卸先から「これ、今週中に足せますか」と打診が来るのは月90件あるが、在庫を見て納期を確かめて返事を書くまでに、平均1.8営業日かかる。

390時間のまま。赤ペンは今月も1本使い切りました。

花子の会社
花子『上げるのは、負けた気がしたけど』
井上さんが3日粘った跡のホワイトボードに「手を動かす回、要ります」
205時間/この月の手作業

注文書と納品書が自動で照合されるようになった。40時間が5時間。在庫の引き当ても自動になり、欠品はその日のうちに連絡して代わりの品を出せるようになった。追加発注の打診への返事が、当日に出る。 ただしこの月、伴走支援の限界が来た。井上さんが「新しい取引先の様式を自分で足したい」と言ったが、Proには一緒に手を動かす回がない。打合せの1時間で口頭の説明を受けて、あとは自力。3日粘って、できなかった。月10万円は払っている。5月からPremiumに上げた。上げるのは負けた気がした、と花子社長は言った。

注文書と納品書の突き合わせが5時間に、在庫の引き当てが10時間になり、205時間。様式を1つ足すのに3日かけて、足せませんでした。

185時間の差

同じ突き合わせに、太郎の会社は毎月40時間かけています。

ここまでの累計 325時間
5か月目

大手グループの、25店

太郎『ありがたい話だけど、また様式が2つ増えた』
花子『今度は2日で足せた』
太郎の会社
太郎『ありがたい話だけど、また様式が2つ増えた』
ホワイトボードに新しい読み替え表。付箋だらけ
425時間/この月の手作業

大手の卸先グループと取引が始まり、傘下の25店から注文が来るようになった。取引先が180社から205社に、受注が月1,200件から1,320件に増えた。ありがたい話だ。ただ、そのグループの様式が2つ増えた。品番の読み替え表を手で作るのに1週間。日々の作業も1割増えて、390時間が425時間になった。売上が増えると、仕事も同じだけ増える。

受注が1割増えて425時間。読み替え表づくりの1週間は、これとは別です。

花子の会社
花子『今度は2日で足せた』
井上さんがキーボードを打ち、その横で当社の担当が腕を組んで見ている
160時間/この月の手作業

同じ日に、同じ25店が始まった。様式を2つ足す作業は、Premiumの「一緒に手を動かす回」で井上さんがやった。当社の担当は隣に座って、詰まったところだけ答えた。代わりには作らない。2日で通った。受注が1割増えたぶん、確認の時間は10時間増えた。それだけだ。 同じ月、納品書と請求書の突き合わせ35時間と、請求と入金の消し込み30時間も自動になった。突き合わせは3回ある。3回目まで来て、ようやく請求まわりが1本につながった。

3回の突き合わせが105時間から15時間になり、受注の確認が10時間増えて160時間。

265時間の差

取引先が25社増えたとき、片方は1週間、片方は2日でした。

ここまでの累計 590時間
6か月目

返事が当日になったら、注文が増えた

太郎『明後日には折り返します、って言うたびに嫌な予感がする』
花子『当日に返事したら、そのまま注文になった』
太郎の会社
太郎『明後日には折り返します、って言うたびに嫌な予感がする』
受話器を置きながら「明後日には折り返します」と言っている
425時間/この月の手作業

忙しい。ただ太郎社長も止まってはいない。秋の展示会に出る決裁をした。これは効いた。一方で、追加発注の打診90件への返事は、今月も平均1.8営業日かかっている。返事の前に他社へ振られた案件が、担当の記憶にあるだけで今月4件あった。数えてはいない。数える画面がないからだ。

425時間。返事が明後日になる理由は、在庫を見て納期を確かめて書くまでに手が3つ挟まるからです。

花子の会社
花子『当日に返事したら、そのまま注文になった』
定時に人が減った事務所。社長は外で新しい卸先の資料を広げている
120時間/この月の手作業

在庫と納期の返事が当日に出るようになって、追加発注の成立率が42%から68%に上がった。差の26ポイントは月23件、平均1件45,000円で月105万円。 同じ月、倉庫と出荷の10名にも受注の画面を配った。設定費が10名で50万円。月額は増えない。倉庫が「今どの注文が来ているか」を自分で見られるようになって、前の日から段取りを組むようになった。 受注1件あたりが5分から4.2分に下がり、商品マスタと読み替え表の手入れが25時間から8時間、在庫の引き当てが5時間になった。月390時間だった手作業が120時間になった。270時間浮いた。全部が新しいことに回るわけではない。4割は残業が減って消えた。2割は会議が伸びたり別の作業に吸われたりして、どこへ行ったかわからない。残った4割を、花子社長は営業訪問に使うと決めた。

商品マスタと在庫まわりが減って120時間。ここで月300時間の差がつきました。

305時間の差

返事が当日に出せるかどうかで、取れる注文が変わりました。

ここまでの累計 895時間
7か月目

取引先が、自分で発注する画面

太郎『380万円か。役員会だな』
花子『FAXでもいいですよ、って言ってあるんだけど』
太郎の会社
太郎『380万円か。役員会だな』
役員会の資料に「380万円・4か月」と書かれた1行
425時間/この月の手作業

太郎社長も同じことを考えた。卸先が自分で発注できる画面があれば、受注の入力そのものが減る。制作会社に相談したら290万円で納期4か月、しかも既製の販売管理と、取引先ごとの掛け率と、品番の読み替えをつなぐ工事が別で90万円。合わせて380万円になった。9月の役員会にかけることにした。太郎社長の判断は間違っていない。380万円は、この規模の会社では役員会にかける金額だ。

425時間。画面の話は、役員会待ちです。

花子の会社
花子『FAXでもいいですよ、って言ってあるんだけど』
小売店の店主がスマートフォンから発注している
105時間/この月の手作業

井上さんが3本目を自分で作った。取引先が自分で発注できる画面。180社のうち、日常的に小口の追加をする72社に配った。夜でも週末でも発注できる。1社あたりの月の発注回数が2.1回から3.4回になった。増えた1.3回に72社を掛けて月94件、平均1件18,000円で月170万円。 取引先に紙をやめていただいたわけではない。今までどおりFAXでもいい。画面のほうが速いから、使う人が使っている。 1つだけ待たされた。取引先に配る画面なので、本番に出す前に当社が動きと安全を確かめる。1日待った。

72社が自分で発注するようになって、読む紙が減り105時間。受注1件あたりは3.5分になりました。

320時間の差

同じ思いつきに、片方は380万円の見積もりが要り、片方は自分で作りました。

ここまでの累計 1,215時間
8か月目

提供元が、人手を売っている

太郎『システムで消えないから、人を売ってるのか』
花子『20万円払って、今月は何もしてない』
太郎の会社
太郎『システムで消えないから、人を売ってるのか』
受発注システムの会社からの封筒。中に「受注データ入力代行」のパンフレット
330時間/この月の手作業

受発注システムの提供元に、全部システムに任せられないかと聞いた。返ってきたのは、受注データ入力の代行サービスの案内だった。ほかに発注と出荷指示の代行、商品データ登録の代行もある。同じ会社が、システムと、そのシステムで消えなかった人手を、両方売っている。システムで消せるなら、この事業は要らないはずだ。太郎社長はそこまで考えたうえで、月28万円で受注データ入力の代行を契約した。正しい判断だと思う。264時間の入力が、社内では169時間になった。「白Tシャツはどのコードか」を答える仕事は、社内に残る。読み替えの判断は外に出せない。

代行に出して95時間が社外に移り、330時間。突き合わせ105時間と読み替えの判断は、社内に残ったままです。

花子の会社
花子『20万円払って、今月は何もしてない』
伴走支援の予定表に、2つの回に斜線が引かれている
105時間/この月の手作業

別注品を受けられるようになった。取引先ごとの名入れ、別色、セット組み。以前は品番の管理が破綻するので断っていた。読み替え表を自分で足せるようになったので、受けられる。この月から12月までに27社・53件、1件平均22万円。 ただしこの月、伴走支援はうまくいかなかった。一緒に手を動かす回が2回とも流れた。1回は井上さんが出荷の応援に取られ、もう1回は花子社長の外出とぶつかった。使わなかった回は翌月に持ち越せない。20万円は払っている。当社は何もしていない。

105時間のまま。伴走支援は20万円払って、今月は1回も使えませんでした。

225時間の差

システムで消えなかった仕事を、その提供元が人手で売っています。

ここまでの累計 1,440時間
9か月目

取引先から、チェックシートが来た

太郎『代行に出した注文書、どこにあるんだ?』
花子『親鍵の話も、同じ紙に書いて出した』
太郎の会社
太郎『代行に出した注文書、どこにあるんだ?』
机に9社分の規約をプリントして広げている
330時間/この月の手作業

大手グループから、取引先のセキュリティ調査票が来た。誰がどのデータを見られるか。注文書と請求書は何年残るか。控えはどこにあるか。太郎社長は9社分のサービスの規約を1枚ずつ調べた。3週間かかった。しかも、代行に出している注文書がどこに保存されて何年残るかは規約から読み取れず、問い合わせて2週間待った。同じ月の役員会で、7月から持ち越していた380万円の案件は保留になった。

日々の330時間は変わらず。これとは別に、調査票の回答に3週間かかりました。

花子の会社
花子『親鍵の話も、同じ紙に書いて出した』
契約書1冊とチェックシートが並んでいる
105時間/この月の手作業

同じ調査票が来た。門番、自動締め出し、見張り、毎日の控えが3か所、鍵の保管庫、誰がいつ何を見たかの記録。契約書を写して4日で出した。ただし同じ紙に「サーバの親鍵は当社が持っている。技術のうえでは当社から社員全員のファイルが見える」も書いて出した。先方の担当者は、それが書いてあることでむしろ安心した、と言った。この件でDPAが要ることがわかり、今月からAIの契約を5席のチーム向けに切り替えた。 この月、新規の卸先が10社決まった。営業訪問で回った先だ。様式を足すのが半日で済むので、初回の受注までが3日。以前は21日かかっていた。

105時間のまま。調査票は契約書を写して4日で出しました。

225時間の差

答えを探すのに3週間、書いてあるのを写すのに4日です。

ここまでの累計 1,665時間
10か月目

岡田さんが、辞める

太郎『請求書、誰も作り方を知らないのか』
花子『様式のクセは、全部書いてある』
太郎の会社
太郎『請求書、誰も作り方を知らないのか』
空いた席と返却されたノートPC。翌週、手書きに戻った請求書の束
355時間/この月の手作業

パソコンとAIに詳しい岡田さんが辞めた。同業に引き抜かれた。太郎社長は岡田さんを責める気にはならない。よくやってくれた人だ。翌週、180社ぶんの請求書をまとめて作るしくみが止まった。岡田さんのパソコンの表計算とスクリプトで動いていたもので、中身は誰も知らない。請求書は手で作ることになって、月25時間増えた。退職の手続きでもう1つ困ったのは、岡田さんが9社のサービスのどれに登録していたか、誰も一覧を持っていなかったことだ。

請求書づくりが手作業に戻り、25時間増えて355時間。誰も中身を直せません。

花子の会社
花子『様式のクセは、全部書いてある』
空いた席。後任が記憶の画面を開いて読んでいる
105時間/この月の手作業

花子の会社でも1人辞めた。受注チームで、取引先ごとの様式のクセを一番よく知っていた人だ。ログインを1か所止めて、それで終わり。道具はサーバの上で動き続けている。様式ごとのクセは記憶に書いてあり、頼み方はチャットの履歴に残っている。翌週、後任が同じ画面を開いて、同じ手順で回した。「この取引先は数量欄が2つある」という書き置きが、そのまま役に立った。

105時間のまま。止めたのはログイン1つだけです。

250時間の差

人は辞めます。問題は、辞めたあとに何が残るかです。

ここまでの累計 1,915時間
11か月目

年末の出荷ピーク。そしてプランを1つ落とす

太郎『総動員だ。今年も乗り切るぞ』
花子『頼まなくても、できてた』
太郎の会社
太郎『総動員だ。今年も乗り切るぞ』
夜の事務所。全員でFAXをさばいている
425時間/この月の手作業

受注が1.35倍。FAXが止まらない。総動員で残業して乗り切った。よく売れた。あわせて、止まった請求書づくりの復旧を180万円で外注した。納品は翌年3月。それまでは手で作る。

受注が1.35倍。入力と突き合わせが積み上がって425時間。増えたぶんは残業で吸収しました。

花子の会社
花子『頼まなくても、できてた』
同じ夜。社長と井上さんが、菓子折りを持って3社を回っている
130時間/この月の手作業

同じ1.35倍だ。ただし受注は勝手に台帳に入る。増えたのは確認の25時間だけ。人は増やしていない。倉庫は受注の画面を見て、前の日から段取りを組んでいる。 この月、伴走支援をPremiumからProに落とした。一緒に手を動かす回は、もう要らない。8月に2回とも流れたとき、井上さんは当社を待たずに1社ぶんの様式を自分で足していた。できるようになっていたのに、回があるから頼んでいただけだった。 ひとつ、いいことばかりではない。10月に自分たちで足した「請求と入金の消し込み」の判定が甘くて、振込名義が屋号と違う3社の入金を未入金と見なし、督促のメールを出してしまった。試す場所で確かめずに本番へ出したのが原因だ。翌日、井上さんと花子社長が3社に謝りに行った。

同じ1.35倍です。増えたのは確認の25時間だけで130時間。人は増やしていません。

295時間の差

片方は外注の見積書にはんこを押し、片方は伴走のプランを1つ落としました。

ここまでの累計 2,210時間
12か月目

1年を、数える

太郎『来年のリスト、去年と同じだな』
花子『様式を足すのに、もう誰にも聞かなくていい』
太郎の会社
太郎『来年のリスト、去年と同じだな』
去年と同じ付箋が貼られたホワイトボード
355時間/この月の手作業

年商4億1,200万円。よくやった1年だった。社員も残業して頑張った。大手グループの25店は当たったし、秋の展示会も効いた。取引先は213社になった。ただ、受注は今も紙とFAXとエクセルで来て、印刷して、手で書いて、また打ち込んでいる。1月に見たガイドラインの図のとおりだ。来年やりたいことのリストは、去年のものとほとんど同じだった。

355時間。1年を通して、作業の中身は1か月目とほとんど同じです。代行に出した分だけが、社外に移りました。

花子の会社
花子『様式を足すのに、もう誰にも聞かなくていい』
白紙に新しい行が書かれていくホワイトボード
105時間/この月の手作業

年商4億6,500万円。取引先は229社に。受注1件あたりの処理時間は12分から3.5分に、突き合わせは月105時間から15時間に、追加発注への返事は平均1.8営業日から当日に、転記ミスは月28件から3件になった。 年末に新しい卸先が2社決まって、その2社の様式を、井上さんが当社に一言も聞かずに半日で足した。花子社長は「来月から伴走支援は要りません」と言った。11か月使って170万円。当社は止めなかった。要らなくなるのが正解だからだ。 1年目の支出は太郎の会社より457万円多い。それでも花子社長は、来年やりたいことのリストを新しく書いている。

105時間。1年で、作業の中身のほうが入れ替わりました。

250時間の差

差がついたのは能力ではなく、再入力を誰が引き受けるかでした。

ここまでの累計 2,460時間

1年後

払ったものと、返ってきたもの。

すべてモデルケースの試算です。物語の中で起きたことだけで組み立てています。

このケースの型:時間と売上、両方に出るベネフィット。浮いた2,460時間に加えて、年商も+5,300万円。5つのケースの中でもっとも差が大きく、9か月目で黒字になりました(試算)。
2460時間花子に浮いた時間(試算)各月の差を12か月ぶん足したもの。この使い道が、売上の差になりました
31本花子が作れたもの(試算)大きいもの3本と、小さいもの20本。大きい3本を外注で揃えると約1,250万円
1398万円差引(粗利・試算)9か月目に、増えた粗利が増えた支出を追い越しました
太郎の会社花子の会社差
年商4.12億円4.65億円5,300万円
1年目の支出1,183万円1,640万円457万円
手作業の時間4,630時間2,170時間2,460時間
もう一つの型:時間にも売上にも出ないベネフィット。下の「外注では頼めなかった、小さいもの」は、年商にも手作業時間の集計にも出てきません。けれど外注で同じものを揃えると約1,250万円かかります(試算)。
売上が増えた理由(+5,300万円)

両社に共通で増えたのが1,200万円です。5月に始まった大手グループの25店で800万円、秋の展示会で400万円。太郎社長も花子社長も同じ手を打っているので、ここは差になりません。差になったのは5つです。1つめ、返事が当日になったことで取れた追加受注が+950万円。卸先からの「これ、今週中に足せますか」という打診は月90件あり、返事が平均1.8営業日後だったときの成立率が42%、当日回答になって68%。差の26ポイントは月23件、平均1件45,000円で月105万円、返事が当日になった4月から12月までの9か月ぶんです。2つめ、欠品による失注が減って+870万円。在庫の引き当てが自動になり、欠品を納品の前に見つけて代わりの品を出せるようになりました。欠品にぶつかる注文が月62件、代替を提案できたのが8%から54%、差の46ポイントは月28.5件、平均38,000円で月108万円、5月から12月までの8か月ぶんです。3つめ、取引先が自分で発注する画面で+1,020万円。小口の追加をする72社に配り、1社あたり月の発注回数が2.1回から3.4回に。増えた1.3回×72社で月94件、平均1件18,000円で月169万円、7月開始で6か月ぶんです。4つめ、別注品で+1,170万円。品番の読み替え表を自分で足せるようになって、名入れと別色とセット組みを受けられるようになりました。8月から12月に27社・53件、1件平均22万円です。5つめ、新規の卸先で+1,290万円。営業訪問に約420時間を使い、新規契約は花子の会社が24社、太郎の会社が8社。差の16社は、様式を足すのが半日で済むので初回受注までが3日、太郎の会社は21日という差から出ています。1社あたり年内の売上が平均81万円です。950+870+1,020+1,170+1,290で5,300万円。すべてモデルケースの試算で、成立率と客単価は自社の過去の受注実績から置いています。

浮いた時間(1年目 2,460時間)

月390時間の手作業が、ハブの動いた3か月目から段階的に減って、7か月目には105時間になりました。太郎の会社は5月に受注が1割増えて425時間、8月から受注データ入力の代行に出して330時間、10月に請求書づくりが止まって355時間、11月の年末ピークは425時間です。12か月ぶんを足すと太郎の会社4,630時間、花子の会社2,170時間で、差は2,460時間。使い道は正直に置きます。4割の984時間は残業が減って消えました。売上には直結しません。4割の984時間が新しいことで、内訳は営業訪問に約420時間、取引先が自分で発注する画面の立ち上げと運用に約280時間、別注品の対応に約180時間、既存の改善に約104時間。残る2割の492時間は、会議が伸びたり別の作業に吸われたりして、どこへ行ったかわかりません。

状況の指標(開始時と12か月目)

受注1件あたりの処理時間は、両社とも1月が12分です。花子の会社は3か月目に5分、7か月目に3.5分。太郎の会社は8月に受注データ入力の代行を月28万円で契約して、社内に残る時間が7.7分になりました。減ったのではなく、外に出した分が費用に変わっただけで、読み替えの判断は社内に残ります。突き合わせの月間時間は、注文書と納品書、納品書と請求書、請求と入金の3回で合わせて月105時間。太郎の会社は12月も105時間のままです。代行の対象は入力だけで、突き合わせは含まれません。花子の会社は5か月目に15時間になりました。受注から回答までのリードタイムは、両社とも1月が平均1.8営業日。花子の会社は4月から当日、太郎の会社は12月で1.6営業日です。転記ミスは月28件から、花子の会社が3件、太郎の会社が24件。代行に出しても、コードの当て違いは社内の判断のところで起きます。

下がらなかったもの

掛け払い(請求書払い)の代行手数料は、請求額の3.2%で1円も下がりません。取引先の3割がこれを使っています。それどころか売上が増えたぶん、花子の会社は太郎の会社より年51万円多く払っています(太郎の会社395万円、花子の会社446万円)。BtoBの卸サイトの掲載料も月35,000円のままで、成約手数料は売れば売るほど額が増えます。会計と勤怠と給与のソフトは、ENVIRONが作らない領域なので両社とも同じものを使い続けています。既製の販売管理システムも抜きません。受注の入口と、3回の突き合わせと、取引先ごとの読み替えだけを引き受けました。人数で払っていたチャットとメモとkintoneを自社サーバに移して、25名で年69万円が消えました。月にすると約57,000円です。これだけでは月13万円の保守の元は取れません。効いたのは、突き合わせに消えていた時間のほうです。

支出の差(457万円)

花子の会社1,640万円、太郎の会社1,183万円です。ここで数えているのは、システムと外注と、率で取られるものだけで、人件費と仕入と運賃は入れていません。花子の会社の内訳は、導入160万円(使う方3名まで50万円に、2月に内勤12名ぶんの設定費60万円、6月に倉庫と出荷10名ぶんの設定費50万円。月額は増えません)、インフラ保守が月13万円×11か月で143万円(取引先200社超の受注が常時流れ込み、注文書と納品書と請求書のPDFを月に約4,000枚ためるので、標準の月10万円ではありません)、最初の1本の受託320万円(2月に前金160万円、4月に残金160万円)、伴走支援170万円(Pro 10万円×3か月、Premium 20万円×6か月、Pro 10万円×2か月)、AI利用料20万円(社長と井上さんがPro、4月から社長がMax 5x、9月にDPAが要ることがわかって5席のチーム向けへ。1ドル150円換算)。ここまでで813万円。残りの827万円は太郎の会社と同じ性質の支出で、そのうち446万円が掛け払いの代行手数料です。太郎の会社の1,183万円は、人数分のSaaSが132万円(Microsoft 365が25名で63万円、社内チャットが25名で21万円、Notionが15名で30万円、kintoneが15名で18万円)、会計と勤怠と給与が48万円、既製の販売管理と倉庫の入出庫と送り状のソフトが216万円、卸サイトの掲載料が42万円、掛け払いの代行手数料が395万円、8月からの受注データ入力の代行が140万円、11月に外注した請求書づくりの復旧が180万円、サイトの修正が1回5万円で6回の30万円です。

差引(+1,398万円)

増えた売上5,300万円の貢献利益率を35%として1,855万円。そこから支出の差457万円を引いたものです。自社ブランドの企画品は粗利が高く、代理店として仕入れている商材は低いので、混ざった状態の平均として35%を置きました。累計で見ると、花子の会社が追い越すのは9か月目です。2月から7月までは、花子の会社が最大620万円多く払っている状態が続きます。ここを越えられない会社は、契約しないほうがいいと思います。

作れたもの

大きいもの5本(受発注のハブ本体、3回の突き合わせ、取引先が自分で発注する画面、品番の読み替え表と商品マスタの管理、別注品の受注と納期の管理)と、小さいもの26本。大きいもの5本を外注で揃えると、業務のしくみ1本100万〜300万円の相場で約1,250万円です。花子の会社が当社に払ったのは1本目の320万円だけで、2本目からは自分で作りました。小さいものは外注に頼む金額ではないので、太郎の会社には存在しないままです。

外注では頼めなかった、小さいもの(花子の会社にだけあるもの)
  • 取引先ごとの様式のクセを1枚にまとめた表
  • 当てが決まらなかった受注の行だけを、朝に並べる一覧
  • 欠品しそうな商品を、注文が入る前に知らせる通知
  • 取引先別の掛け率と最低ロットを、その場で出す画面
  • 出荷の遅れを取引先ごとに色分けする表
  • 返品と交換の理由を月でまとめる一覧
  • 新しい取引先の様式を足す手順を、そのまま画面にした登録フォーム
  • 未入金の督促文を、担当者名まで入れて下書きする画面
  • 倉庫の10名が見る、今日ピッキングする順番の一覧
  • 年末の出荷だけ使った、当日出せる注文の進み具合の画面
太郎社長が見積もりを取って、諦めたもの
  • 取引先30社ぶんの様式を読んで受注に変えるしくみ(見積380万円・納期5か月。3月に相談し、9月の役員会で保留。翌年に持ち越し)
  • 注文書と納品書と請求書の3点照合(見積220万円。受注のしくみが先だと言われ、着手できず)
  • 取引先が自分で発注する画面(画面が290万円、既製の販売管理と掛け率と品番の読み替えをつなぐ工事が90万円で合わせて380万円・納期4か月。9月の役員会で保留)
  • 取引先ごとの品番読み替え表の管理画面(様式が増えるたびに追加費用が要ると言われ、相談の段階で終了)
  • 別注品の受注と原価と納期の管理(既製の販売管理では品番が持てないと言われ、エクセルの運用を続けることに)

2年目と、3年目。

ここから先は物語ではなく、数字だけです。導入費と最初の1本の支払いが終わるので、2年目に支出が入れ替わります。

太郎 年商太郎 支出花子 年商花子 支出
1年目4.12億円1,183万円4.65億円1,640万円
2年目4.25億円1,600万円5.1億円1,040万円
3年目4.38億円1,460万円5.5億円1,083万円
3年の合計12.75億円4,243万円15.25億円3,763万円

年商

花子の会社が、毎年上に伸びていきます。

0億2.5億5億7.5億10億4.12億4.65億1年目花子が +5,300万円4.25億5.1億2年目花子が +8,500万円4.38億5.5億3年目花子が +11,200万円
0億2.5億5億7.5億10億4.12億4.65億1年目4.25億5.1億2年目4.38億5.5億3年目
1年目花子が +5,300万円2年目花子が +8,500万円3年目花子が +11,200万円
太郎の会社花子の会社

1年ごとの支出

2年目に入れ替わります。導入費と最初の1本の支払いが終わるためです。

0万500万1,000万1,500万2,000万1,183万1,640万1年目花子が +457万円1,600万1,040万2年目花子が −560万円1,460万1,083万3年目花子が −377万円
0万500万1,000万1,500万2,000万1,183万1,640万1年目1,600万1,040万2年目1,460万1,083万3年目
1年目花子が +457万円2年目花子が −560万円3年目花子が −377万円
太郎の会社花子の会社

手作業に使った時間(1年あたり)

この業務まわりで、社内の3人が手を動かした時間の合計です。

0h1,250h2,500h3,750h5,000h4,630h2,170h1年目花子が −2,460時間3,900h1,150h2年目花子が −2,750時間3,400h1,000h3年目花子が −2,400時間
0h1,250h2,500h3,750h5,000h4,630h2,170h1年目3,900h1,150h2年目3,400h1,000h3年目
1年目花子が −2,460時間2年目花子が −2,750時間3年目花子が −2,400時間
太郎の会社花子の会社

1年目は月ごとの合計です。太郎の会社は8月からの受注データ入力の代行で月95時間が社外に移り、10月に請求書づくりが止まって25時間戻りました。2年目の後半に様式の読み取りが外注で入ってさらに減りますが、3回の突き合わせと読み替えの判断は社内に残ります。花子の会社は小さい道具が増えるにつれてさらに減っていきます。3年の合計は太郎の会社11,930時間、花子の会社4,320時間。差の7,610時間は、1人分の1年を1,900時間とすると約4.0人分の1年にあたります。

2年目

花子の会社の支出が、太郎の会社を下回る年です。導入費と最初の1本の支払いが終わり、伴走支援も卒業したので、残るのは月額とAIの利用料と、下がらない掛け払いの手数料だけになります。太郎の会社はこの年、1年目に保留した様式の読み取りをついに外注します。380万円、納期5か月。届いたとき、花子の会社は同じものを2年近く使っています。しかも届くのは相談したときの30様式ぶんで、その後に増えた様式は別の見積もりです。受注データ入力の代行は止められず、通年で336万円になります。

3年目

差が固定される年です。花子の会社は2本目からを自分で作るので、外注費はゼロのままです。取引先が増えても様式が増えても、半日で足します。太郎の会社は人数分の月額が上がり続け、次は3点照合の220万円を出します。読み替えの判断は代行に出せないので、社内に残ったままです。1年目と同じ景色が、3年目にもあります。

3年でついた差は、粗利で見て
+9,230万円。

すべてモデルケースの試算です。花子の会社の月額は契約の範囲内なら動きません。サーバを大きく使うようになれば見積もりを出し直すので、そのときは増えます。掛け払いの代行手数料と卸サイトの成約手数料は、両社とも売上に比例して増える前提で置いているので、売上が伸びる花子の会社のほうが多く払います。太郎の会社の支出は、人数分の月額の値上げと、受注データ入力の代行の通年化と、2年目と3年目に1本ずつの外注を見込んだ数字です。

工程ごとの、手作業の時間。

1年目、ハブが動いたあとの月あたりの時間です。内勤の6名で分担しています。太郎の会社の390時間は、5月に取引先が25社増えて425時間になり、8月に受注データ入力の代行を月28万円で契約して330時間になりました。代行に出した95時間は消えたのではなく、費用に変わって社外へ移っただけです。

紙とFAXとメールとエクセルの注文を読んで、自社の商品コードに引き当てて入力する240時間77時間注文書と納品書を突き合わせる40時間5時間納品書と請求書を突き合わせる35時間4時間請求と入金を消し込む30時間6時間商品マスタと取引先ごとの品番読み替え表を手で直す25時間8時間在庫を引き当てて、欠品を連絡する20時間5時間
紙とFAXとメールとエクセルの注文を読んで、自社の商品コードに引き当てて入力する240時間77時間注文書と納品書を突き合わせる40時間5時間納品書と請求書を突き合わせる35時間4時間請求と入金を消し込む30時間6時間商品マスタと取引先ごとの品番読み替え表を手で直す25時間8時間在庫を引き当てて、欠品を連絡する20時間5時間
太郎の会社花子の会社
390時間太郎の会社 月あたり(試算)
105時間花子の会社 月あたり(試算)
285時間差この時間を何に使うかが、分かれ道になりました

なぜ、差がついたのか。

物語の中で起きたことを、理由の形に並べ直したものです。

01

再入力は、不具合ではなかった

流通システム標準普及推進協議会の「流通BMSにおけるWeb-EDIガイドライン」第1.0版(2012年3月)は、正規の業務フローとして「表示・印刷 → 手書メモ → 再入力」を図に描いています。回避策ではなく、そういう設計です。だからどの製品に乗り換えても消えません。太郎社長が納得したのは正しい判断でした。花子社長は、図の「再入力」の1か所だけを自社サーバに引き受けました。

02

取引先には、紙をやめていただいていない

先方の様式はそのままです。FAXでもメールの添付でもエクセルでも、今までどおり送ってもらいます。相手を変えさせる提案は、通らないか、通っても半年遅れます。花子の会社が変えたのは自社の受け口だけで、それでも受注1件あたりが12分から3.5分になりました。結果として72社が自分で発注する画面に移りましたが、移らなかった社は今もFAXです。

03

AIで読めても、白Tシャツはまだ選ぶ

文字は読めます。ただし「白Tシャツ」が自社のどの商品コードかは読み取りの外で、「1ケース」が何枚かは紙に書いてありません。ここは人に戻ります。花子の会社も最初の月は自動で当たったのが68%でした。読み替え表を足すたびに上がっていきますが、ゼロにはなりません。ここを正直に置かないと、あとで話が合わなくなります。

04

提供元が、人手を別事業で売っている

受発注システムの提供元自身が、受注データ入力の代行、発注と出荷指示の代行、商品データ登録の代行を別のサービスとして売っています。システムで消せると考えているなら、この事業は要らないはずです。太郎社長は月28万円で入力の代行を契約しました。正しい判断です。ただし社内の時間が95時間減っただけで、突き合わせ105時間は残り、読み替えの判断も社内に残りました。外に出したものは、費用として毎月出ていきます。

05

突き合わせが、3回ある

注文書と納品書、納品書と請求書、請求と入金。3回で月105時間です。代行サービスの対象は入力なので、ここは減りません。花子の会社は台帳が1本なので、3回とも自動で照らして、合わないものだけ人が見ます。15時間になりました。

06

返事が当日になると、注文が変わる

追加発注の打診は月90件あります。返事が平均1.8営業日かかっていたときの成立率は42%、当日回答で68%。在庫を見て、納期を確かめて、返事を書く。この3つが1画面になっただけで、月23件の注文が増えました。太郎の会社は他社に振られた件数を数えていません。数える画面がないからです。

07

様式が増えるたびに、自分で足せる

太郎の会社は、大手グループの25店が始まったとき、読み替え表を作るのに1週間かかりました。制作会社に頼めば、様式が増えるたびに追加費用です。花子の会社は5月に2日、9月に半日、12月に半日。新しい卸先の初回受注までが21日から3日になり、新規契約が24社と8社に分かれました。

08

伴走支援は、11か月で終わった

2月から4月はPro(打合せ月1回・一緒に手を動かす回なし)で始めましたが、4月に様式を1つ足すのに3日かけて足せず、5月にPremiumへ上げました。上げるほうの判断です。8月は手を動かす回が2回とも流れて、20万円を払って当社は何もしていません。11月にProへ戻し、12月に卒業を申し出ました。合計170万円。卒業の条件は「様式が増えるたびに自分たちで足せる」でした。当社は隣に座るだけで代わりには作らないので、自分で作れるようになったら要らなくなります。要らなくなるのが正解です。

09

人が辞めても、止まらない

太郎の会社は岡田さんの退職で請求書づくりが止まり、手作業に戻って月25時間増え、復旧に180万円を外注しました。納品は翌年3月です。9社のサービスのどれに登録していたかの一覧も、誰も持っていませんでした。花子の会社でも様式のクセを一番よく知っていた人が辞めましたが、道具はサーバの上にあり、クセは記憶に、頼み方はチャットの履歴に残っています。ログインを1か所止めて、後任が翌週から同じ画面を開きました。

10

掛け払いの手数料は、1円も下がらない

請求額の3.2%は下がりません。売上が増えれば率で取られる額も増えるので、花子の会社は太郎の会社より年51万円多く払っています。卸サイトの掲載料と成約手数料、会計と勤怠と給与のソフトも同じです。ENVIRONはここに手を出しません。下がるのは、人数で払っているものと、突き合わせに消えている時間だけです。

システムを買うのではなく、
作れる場所を持つ。

まずは、いま一番手間のかかっている紙を数枚お持ちください。どこに何時間かかっているかを、一緒に見るところから始めます。初回のお打ち合わせと洗い出しは、無償です。
メールには、会社名と、いま一番手間な作業を一行だけ。それで結構です。

株式会社田中大介 代表取締役 伊丹谷 大介
mail@tanakadaisuke.com