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毎日3室、売らずに置いていた。

温泉旅館を1軒。客室30室、貸切風呂が3つ、宴会場が2つ。日帰り入浴と売店もあります。従業員25名(フロントと予約と事務8名、調理7名、客室と清掃10名)に、清掃のパートが8名。年商2億8,000万円。情シスはいません。同じ日に、太郎社長と花子社長が、前の年の稼働率の表を開きました。

従業員25名年商2億8,000万円客室30室情シスなしモデルケースの試算

同じ日に、二人の社長が
「今年こそ手を打とう」と決めました。

売っているものも、規模も、社員の数も同じ会社です。違うのは、道具をどこに置いたかだけです。

太郎の会社

売っているサービスを組み合わせて回します。

足りないところは、そのつど外注します。社内にパソコンに詳しい社員が1人います。

花子の会社

自社のサーバを1台持ちます。

足りないところは、自分たちで作ります。ENVIRONを契約し、最初の1本だけ当社が作ります。

1年の手作業時間、12か月ぶん

社内3人が、この業務まわりで手を動かした時間です。3か月目にハブが動いてから、花子の会社だけが落ちていきます。

0125250375500123456789101112太郎 340時間花子 170時間
0125250375500136912太郎 340時間花子 170時間
太郎の会社花子の会社単位は時間/月
太郎の会社売っているサービスを組み合わせる
花子の会社自社のサーバで、自分たちで作る
1か月目

止めておいた、3室

太郎『止めておかないと、二重予約になるからな』
花子『あの3室、台帳がないから止めてるんですよね』
太郎の会社
太郎『止めておかないと、二重予約になるからな』
フロントの壁に貼った月間の予定表。毎日3室ぶんに赤い斜線が引いてある
340時間/この月の手作業

年始に前の年の数字を見た。稼働率62%、直販比率18%。悪くはない。気になったのは、毎日3室を売らずに止めていることだった。電話と常連さんのための枠だ。サイトコントローラーの販売店に聞くと、電話の予約もサイトコントローラーに入れてしまえば止めなくていい、と言われた。ただ、電話の予約をそこへ入れるのはフロントの手作業で、忙しい日は入れるのが夜になる。入れる前に同じ部屋がOTAで売れると、二重予約になる。だから止める。太郎社長は納得した。うちのやり方が雑なわけではなかったのだ。

電話とメールとFAXの直販予約を写すのに95時間、OTA3サイトの在庫と料金の入れ直しに70時間、清掃と客室の割り当てに48時間、予約と宿泊管理システムと厨房の食数の突き合わせに42時間、キャンセルと変更の伝達に38時間、貸切風呂と宴会場の枠の受付に25時間、宿泊者名簿と実績の集計に22時間。フロントと予約と事務の8名で分担して、合計340時間です。

花子の会社
花子『あの3室、台帳がないから止めてるんですよね』
同じ予定表の前で、赤い斜線を指でなぞっている
340時間/この月の手作業

花子社長も同じ数字を見て、同じ説明を聞いた。納得はした。ただ、止めている3室が引っかかった。あの3室は、うちに台帳がないから止めているんですよね、と聞いた。 OTAへの接続は既製のサイトコントローラーがちゃんとやっている。ここは世の中の話なので、抜かない。足りないのはその手前だ。部屋と貸切風呂と宴会場の枠を、自分のところで1本持っていない。ENVIRONを契約して、最初に頼んだのが「客室30室と貸切風呂3つと宴会場2つの枠を1本の台帳にして、直販の予約をここで受けて、サイトコントローラーへ渡す」だった。

契約したばかりで、まだ何も動いていません。作業の中身も時間も、太郎の会社とまったく同じ340時間です。

0時間の差

同じ説明を聞いて、片方は納得で終わり、片方は止めている3室の理由を数えました。

ここまでの累計 0時間
2か月目

いちばん暇な月に、いちばん払った

太郎『1回90分か。週1回が限界だな』
花子『247万円払って、まだ何も変わってない』
太郎の会社
太郎『1回90分か。週1回が限界だな』
閑散期のロビー。誰もいない受付で料金の入れ直しを続けている
340時間/この月の手作業

2月は閑散期だ。稼働率は38%まで落ちる。太郎社長は直前割を出した。判断は正しい。ただ、値段を1回変えるのに、サイトコントローラーの画面で日付と部屋タイプを1つずつ選んで入れ直す。90分かかる。3サイトの見え方も確かめに行くので、実際は半日仕事になる。だから週に1回が限界だった。空いている日は、空いたまま過ぎていく。

先月と同じ340時間。閑散期でも、写す件数が減るだけで作業の種類は減りません。

花子の会社
花子『247万円払って、まだ何も変わってない』
更地に建物の骨組み。伴走支援の見積書は封を切らずに机の端
340時間/この月の手作業

サーバが立ち上がり、ログインが1つにまとまった。ただ、業務はまだ何も変わっていない。導入は使う方3名までで50万円だが、フロントと予約と事務の12名に配ることにしたので、4人目からの設定費が9名で45万円。合わせて95万円になった。保守12万円、最初の1本の前金140万円。この月、247万円を払って、売上は1円も増えていない。 伴走支援は付けなかった。要る気はした。ただ旅館の社長は現場に立つ。月に何度も打合せの日を空けられない、というのが本当のところだった。当社は勧めなかった。付けなくても環境は動く。ただし2本目からは自分たちで作ることになりますよ、とだけ伝えた。

サーバとログインは整いましたが、業務のしくみはまだ1本もありません。手作業は先月のままの340時間です。

0時間の差

この月だけを見れば、花子社長の負けです。247万円払って、作業は1分も減っていません。

ここまでの累計 0時間
3か月目

3室の斜線を、消した

太郎『忙しい日ほど、止めておかないと危ない』
花子『3室、出せるようになった』
太郎の会社
太郎『忙しい日ほど、止めておかないと危ない』
赤い斜線が引かれたままの予定表
340時間/この月の手作業

3月は卒業旅行と春休みでよく入った。ありがたい。ただ、毎日3室の斜線は今月も引いてある。忙しい日ほど電話の予約を入れるのが遅くなるから、忙しい日ほど止めておかないと危ない。太郎社長もそれは分かっている。分かったうえで、止めるほうを選んでいる。

340時間のまま。よく入った月ほど、写す件数が増えます。

花子の会社
花子『3室、出せるようになった』
斜線を消しゴムで消したあとの、白い3行
250時間/この月の手作業

台帳が動いた。客室30室と、貸切風呂3つの1日18枠と、宴会場2つが、1本の台帳に載った。直販の予約は自社サイトからも電話からも、ここに入る。空室はサイトコントローラーへ渡す。サイトコントローラーはそのままだ。OTAとの接続は既製品が担っている。抜いていない。渡す数が変わるだけだ。 斜線を消した。3室が毎日OTAに出るようになった。予約の写しが月95時間から25時間に、OTAの在庫の見比べが70時間から50時間になった。社内チャットとメモも自社サーバに移した。

予約の写しと在庫の見比べが減って250時間。斜線を消せたのは、渡す数を台帳が決めるようになったからです。

90時間の差

太郎の会社は今月も、毎日3室を売らずに置いています。

ここまでの累計 90時間
4か月目

3時間半が、4分になった

太郎『また振替か。あのお客さん、もう来ないだろうな』
花子『夜まで待たなくて、よくなった』
太郎の会社
太郎『また振替か。あのお客さん、もう来ないだろうな』
詫び状を書きながら、近くの宿に電話をかけている
340時間/この月の手作業

大型連休の料金を決める会議をした。部屋タイプごとに日付を選んで入れる。丸1日かかった。正しい仕事だし、現場も文句は言わない。 同じ月、新年度で人が入れ替わり、予約を写す担当が変わった。慣れるまでのあいだに二重予約が月4件から6件に増えた。1件出るたびに近くの宿を手配して、差額を持つ。1件およそ28,000円だ。金額よりつらいのは、そのお客さんが二度と来ないことだった。

340時間。連休の料金を決めた丸1日は、これとは別です。

花子の会社
花子『夜まで待たなくて、よくなった』
予約が入った瞬間に、画面の残室が1つ減る
205時間/この月の手作業

直販の予約が入ると、その場で台帳の空きが減って、サイトコントローラーへ渡る。3時間半が4分になった。忙しい日に夜まで待つことがなくなって、二重予約が月4件から0件になった。 連休の料金も、台帳の側で決めて流し込めるようになった。1回90分が10分だ。ただしこれは1本目の受託に入っていた範囲で、まだ自分たちで作ったものではない。どの日の料金を上げるかは、今も人が探している。

在庫の見比べとキャンセルの伝達が減って205時間。二重予約は0件になりました。

135時間の差

反映が3時間半か4分かで、止めておく部屋の数が変わります。

ここまでの累計 225時間
5か月目

2週間かけて、作れなかった

太郎『上げたいけど、90分は取れない』
花子『頼み方が、毎回ぶれてる』
太郎の会社
太郎『上げたいけど、90分は取れない』
連休のフロント。行列の向こうで電話が鳴っている
355時間/この月の手作業

大型連休。フロントも清掃も総動員で回した。よく売れた。太郎社長も現場に立った。ただ、連休のあいだに残室が3室を切った日が11日あって、そこは値段を上げられたはずだった。上げる作業に90分かかるので、手が空かなかった。惜しいが、あの忙しさでは仕方がない。

連休で確認と伝達が増えて355時間。値段を上げられたはずの11日は、手が回りませんでした。

花子の会社
花子『頼み方が、毎回ぶれてる』
同じ連休。深夜の事務室で、大原さんが4回目の作り直しをしている
205時間/この月の手作業

同じ連休を、同じように回した。売れ方も同じだ。 この月、フロント主任の大原さんが2本目に手を出した。残室が少ない日を見つけて、料金を上げる案を出す画面だ。伴走支援を付けていないので、隣に座る人はいない。作業員に頼んで、動くところまでは行った。ただ、どの日を対象にするかの決め方が自分の中で固まっていなくて、頼み方が毎回変わった。2週間やって、使える形にならなかった。 花子社長は伴走支援の見積もりを取り寄せた。Proが月10万円。取り寄せたところで止まった。連休の現場が忙しくて、打合せの日が取れなかったからだ。

205時間のまま。2週間かけて、道具は1本も増えていません。

150時間の差

伴走支援を付けないと、こういう月が出ます。2週間が丸ごと消えました。

ここまでの累計 375時間
6か月目

戸田さんが、辞める

太郎『あの表、誰も作り方を知らないのか』
花子『プランのクセは、全部書いてある』
太郎の会社
太郎『あの表、誰も作り方を知らないのか』
空いた席と返却されたノートPC。翌週、3つのOTAの画面を並べて手で見比べている
375時間/この月の手作業

パソコンに詳しい戸田さんが辞めた。同業の大きいホテルに移った。太郎社長は責める気にならない。よくやってくれた人だ。 翌週、3つのOTAの在庫と料金の差分を並べる表計算が止まった。戸田さんのパソコンの中で動いていたもので、中身は誰も知らない。料金改定は月1回もできなくなり、直販の予約がOTAに反映されるまでの時間が3時間半から5時間に延びた。退職の手続きでもう1つ困ったのは、戸田さんが何社のサービスに登録していたか、誰も一覧を持っていなかったことだ。

差分の表計算が止まって、手で見比べる時間が増えて375時間。料金改定は、この月から手つかずです。

花子の会社
花子『プランのクセは、全部書いてある』
空いた席。後任が記憶の画面を開いて読んでいる
205時間/この月の手作業

花子の会社でも1人辞めた。予約担当で、OTAごとのプランのクセを一番よく知っていた人だ。ログインを1か所止めて、それで終わり。台帳はサーバの上で動き続けている。プランのクセは記憶に書いてあり、頼み方はチャットの履歴に残っている。翌週、後任が同じ画面を開いて、同じ手順で回した。「このサイトは子ども料金の欄が2つある」という書き置きが、そのまま役に立った。 ただしこの月、大原さんは5月に作れなかった画面に戻れなかった。連休明けの立て直しで手が空かない。伴走支援を付けていれば、この月に1回は隣に座ってもらえたはずだった。

205時間のまま。止めたのはログイン1つだけです。ただし2本目は、まだできていません。

170時間の差

人は辞めます。問題は、辞めたあとに何が残るかです。

ここまでの累計 545時間
7か月目

清掃の8人に、紙を配るのをやめた

太郎『8人分で年96,000円か。それでも通しにくい』
花子『配っても、増えるものがない』
太郎の会社
太郎『8人分で年96,000円か。それでも通しにくい』
朝7時のフロント。刷り直した割り当て表を8人に配っている
375時間/この月の手作業

チェックアウトが10時、チェックインが15時。この5時間で30室を仕上げる。清掃はパート8名だ。連泊と早発ちとアーリーチェックインが前の日に確定しないので、朝フロントで割り当て表を刷って配る。刷り直しが1日2回ある。終わった部屋は内線で知らせてもらい、フロントの黒板に書く。 パート8名にアカウントは配っていない。1人1,000円のツールを8人分足す話は毎年出て、毎年見送りになる。8人で年に96,000円の話なのだが、増やす理由を説明しにくい。

375時間。割り当ての48時間は、紙で配っているかぎり減りません。

花子の会社
花子『配っても、増えるものがない』
清掃のパートが廊下でスマートフォンを押し、フロントの画面の1室が緑に変わる
150時間/この月の手作業

客室と調理と清掃の13名に、清掃のパート8名を足した21名へ、画面を配った。設定費が105万円。月額は増えない。人数で払っていないから、配っても増えるものがない。 清掃が終わった部屋をその場で押すと、フロントの画面が変わる。早発ちが出たらその場で並べ替わる。割り当ての作業が月48時間から8時間になった。仕上がる順番が読めるようになって、14時にチェックインできる日が月に9日できた。それをそのままプランにした。 配る先が増えたので、誰が何を見られるかを決めた。ついでに、サーバの親鍵は当社が持っていること、技術のうえでは当社から社員全員のファイルが見えることも、この月に社内へ説明した。先に言っておかないと、あとで話が合わなくなる。

割り当てと突き合わせが減って150時間。ここで月225時間の差がつきました。

225時間の差

人数で払っていると、配れない人が出ます。配れない人のところで、情報が切れます。

ここまでの累計 770時間
8か月目

値上げの通知と、本番前の1日

太郎『1通ずつは数百円なんだけどな』
花子『枠に登録するだけで、宴会場が売り物になった』
太郎の会社
太郎『1通ずつは数百円なんだけどな』
3通の通知を並べて電卓を叩いている
375時間/この月の手作業

値上げの通知が3通届いた。事務のソフトの改定、社内チャットの改定、それにサイトコントローラーの接続先を1つ足すぶんの料金。1通ずつは数百円の話だ。太郎社長は受け入れた。合計を出したことはない。出してみたら、25人分で年に9万円ほど増えていた。世界共通の定価改定で法人向けの主力プランが上がったのは去年の7月で、日本円の価格が2割上がったのはその前だ。積み上がっている。

375時間。値上げの通知は、手作業の時間には出てきません。

花子の会社
花子『枠に登録するだけで、宴会場が売り物になった』
宿泊3日前のお客さまの画面に、空いている貸切風呂の時間だけが並んでいる
150時間/この月の手作業

花子の会社にも通知は届く。ただし届く数が少ない。人数で払っていたチャットとメモを3月に自社サーバへ移したからだ。 ただしOTAの掲載料と送客手数料は1円も下がらない。むしろ売れているぶん、太郎の会社より多く払っている。ここは下がらないものだと、最初から言われていた。 この月、大原さんが3本目を作った。直販で予約した人に、宿泊の3日前に貸切風呂と食事の追加を案内する画面だ。空いている時間枠だけを出す。台帳が1本だから出せる。お客さまに出すものなので、本番に出す前に当社が動きと安全を確かめた。1日待った。 同じ月、宴会場2つの平日の時間貸しも始めた。枠に登録するだけで、新しいしくみは要らなかった。

150時間のまま。新しく始めた仕事で増えたぶんと、集計が減ったぶんが、ちょうど釣り合いました。

225時間の差

下がったのは人数で払っていたもの。下がらなかったのは率で取られるものです。

ここまでの累計 995時間
9か月目

台風の夜に、24室が消えた

太郎『誰も悪くない。伝える先が、紙と内線しかないんだ』
花子『申込書、書いたけど出さなかった』
太郎の会社
太郎『誰も悪くない。伝える先が、紙と内線しかないんだ』
翌朝の厨房。仕込み終わった24人分の皿の前で立っている
375時間/この月の手作業

台風で、一晩に24室のキャンセルが出た。キャンセルは電話とOTA3社の管理画面とメールの4か所から来る。フロントが紙に書き写して、翌朝の朝礼で厨房に伝えた。伝わったときには仕込みが終わっていて、食材を捨てた。およそ38万円ぶんだ。清掃のパート8名には前の夜に連絡が回らず、8人がいつもどおり出勤してきた。誰も悪くない。伝える先が紙と内線しかないだけだ。

375時間。台風の夜の書き写しは、これとは別に14時間かかりました。

花子の会社
花子『申込書、書いたけど出さなかった』
前夜21時、清掃のパートのスマートフォンに、明日の割り当てが消えた通知
150時間/この月の手作業

同じ台風で、同じくらいのキャンセルが出た。キャンセルは台帳に入る。OTA経由のぶんもサイトコントローラーから戻ってくる。その日のうちに厨房の画面の食数が変わり、清掃の画面から翌日の割り当てが消えた。食材のロスはおよそ9万円。パートには前の日の21時に連絡が飛んだ。 いいことばかりではない。この月、大原さんが作った貸切風呂の枠に間違いがあった。清掃の15分を挟まずに連続で予約が取れてしまい、1日に3組を待たせた。試す場所で確かめずに本番へ出したのが原因だ。翌週直して、3組にはお詫びの一品と次回の割引を出した。 花子社長は、この月あらためて伴走支援のProを申し込みかけた。申込書まで書いて、出さなかった。来月の予約が動く前に、一度自分たちで直してみます、と言った。

150時間のまま。台風の夜に増えたのは、確認の2時間だけです。

225時間の差

台風は両方に来ます。差が出たのは、その夜に何が動いたかです。

ここまでの累計 1,220時間
10か月目

OTAのランキングが、下がった

太郎『20日前から落ちてたのか』
花子『同意をもらった人にだけ、出す』
太郎の会社
太郎『20日前から落ちてたのか』
手で数えた集計表。「20日前から落ちていた」と赤で書き足してある
375時間/この月の手作業

OTAのランキングが下がって、11月の予約の入りが前の年より落ちた。これはENVIRONを入れていても変わらない。OTAの中の順位はこちらの台帳の外にあって、どちらの会社にもどうにもできない。 太郎の会社が気づいたのは20日後だった。月次の集計でわかった。しかも戸田さんの表計算が止まっているので、手で数えている。気づいてからは早かった。写真を撮り直して、プランの説明を書き直して、OTAの担当に連絡した。手は打った。ただ11月の入りは戻り切らなかった。 同じ月の役員会で、4月から持ち越していた枠の台帳の案件は保留になった。420万円、納期5か月。この規模の会社では役員会にかける金額だ。太郎社長の判断は間違っていない。

375時間。手で数えた月次の集計に、今月は32時間かかりました。

花子の会社
花子『同意をもらった人にだけ、出す』
毎朝の数字の画面。経路別の折れ線が1本だけ下を向いている
150時間/この月の手作業

同じ日に、同じだけ順位が下がった。花子の会社が気づいたのは3日後だ。毎朝の数字に、経路ごとの予約の入りが出ている。 打った手は太郎の会社と同じで、写真とプランと連絡だ。違ったのは、そのあと直販へ回したことだった。過去に2回以上泊まった人の名簿が自社にある。ただしOTA経由で来た人への案内は、チェックインのときにご本人から直接いただいた同意の範囲でだけ出す。台帳が1本なので、同意をもらった人ともらっていない人が分かれて残っている。出せたのは1,180人で、11月の平日に42室が直販で埋まった。 もうひとつ、この月から団体の照会が来はじめた。

150時間のまま。気づいたのは、毎朝の数字を見ていた3日目です。

225時間の差

OTAの順位は、どちらにもどうにもできません。違ったのは、気づくまでの日数です。

ここまでの累計 1,445時間
11か月目

10室まとめて空いている日

太郎『見比べる先が4つあるんだ。2日はかかる』
花子『その場で押さえられます、と言えた』
太郎の会社
太郎『見比べる先が4つあるんだ。2日はかかる』
3つのOTAの在庫画面と紙の予定表を並べて、指で追っている
390時間/この月の手作業

スポーツ団体から、12月から3月で10室以上まとめて取れる日を教えてほしい、と打診が来た。太郎社長は3つのOTAの在庫画面と手元の予定表を見比べて、候補の日を出した。2日かかった。返事を書いているあいだに、候補の日のうち3日がOTAで売れた。出し直して、先方は別の宿に決めた。悔しい話だが、2日かかるのは仕方がない。見比べる先が4つあるからだ。 紅葉の月でよく入った。総動員で回した。

紅葉の繁忙と団体の照会で390時間。見比べる先が4つあるかぎり、2日はかかります。

花子の会社
花子『その場で押さえられます、と言えた』
団体の担当者に、その場で画面を見せている
165時間/この月の手作業

同じ打診が来た。台帳が1本なので、10室以上空いている日はその場で出る。仮押さえもできる。台帳の上で押さえて、その日数だけサイトコントローラーへ渡す数を絞る。サイトコントローラーは既製のままで、渡す数が変わるだけだ。 年内に4件、翌年3月までで合わせて9件決まった。合宿と社員旅行と法事だ。1件あたり平均10室の2泊で、およそ68万円。 同じ月、宴会場の平日の時間貸しが月18件になった。地元の会合と、撮影と、ヨガの教室だ。

団体と時間枠の仕事が増えて165時間。増えたのは、新しく始めた仕事のぶんです。

225時間の差

10室まとめて空いている日を出すのに、片方は2日、片方はその場でした。

ここまでの累計 1,670時間
12か月目

1年を、数える

太郎『来年のリスト、去年と同じだな』
花子『来年も、付けないと思います』
太郎の会社
太郎『来年のリスト、去年と同じだな』
去年と同じ赤い斜線が引かれた、来年の予定表
400時間/この月の手作業

年商2億8,600万円。よくやった1年だった。社員も残業して頑張った。春の広告枠は効いたし、写真も撮り直した。年末年始は満室だった。 あわせて、止まったままの表計算の作り直しを180万円で外注した。納品は翌年3月。それまでは手で見比べる。稼働率は62%から64%に、直販比率は18%から22%になった。上がってはいる。ただ、毎日3室の斜線は今年も引いたままだった。来年やりたいことのリストは、去年のものとほとんど同じだ。

年末年始の満室で400時間。1年を通して、作業の中身は1か月目とほとんど同じです。

花子の会社
花子『来年も、付けないと思います』
斜線のない、白いままの来年の予定表
170時間/この月の手作業

年商3億2,400万円。稼働率は71%、直販比率は28%。料金を1回変えるのにかかる時間は90分から10分になり、直販の予約がOTAに反映されるまでは3時間半から4分になった。 伴走支援は、1年間ずっと付けなかった。付けなかったぶん、5月に2週間を捨てている。9月には申込書まで書いた。それでも12月に、大原さんは5月に作れなかった料金改定の画面を、誰にも聞かずに作り直した。花子社長はこう言った。伴走を付けていたら、あれは5月にできていたと思います。7か月ぶん遅れました。ただ、うちは打合せの日が取れない。来年も付けないと思います。 当社は勧めなかった。要らないなら要らない。要らなくなるのが正解なので、最初から要らないなら、それでいい。 1年目の支出は太郎の会社より341万円多い。それでも花子社長は、来年やりたいことのリストを新しく書いている。

170時間。1年で、作業の中身のほうが入れ替わりました。

230時間の差

差がついたのは能力ではなく、枠の台帳をどこに置いたかでした。

ここまでの累計 1,900時間

1年後

払ったものと、返ってきたもの。

すべてモデルケースの試算です。物語の中で起きたことだけで組み立てています。

このケースの型:時間と売上、両方に出るベネフィット。浮いた1,900時間に加えて、年商も+3,800万円。8か月目で差引が黒字になりました(試算)。
1900時間花子に浮いた時間(試算)各月の差を12か月ぶん足したもの。この使い道が、売上の差になりました
27本花子が作れたもの(試算)大きいもの3本と、小さいもの20本。大きい3本を外注で揃えると約1,050万円
1369万円差引(粗利・試算)8か月目に、増えた粗利が増えた支出を追い越しました
太郎の会社花子の会社差
年商2.86億円3.24億円3,800万円
1年目の支出2,579万円2,920万円341万円
手作業の時間4,380時間2,480時間1,900時間
もう一つの型:時間にも売上にも出ないベネフィット。下の「外注では頼めなかった、小さいもの」は、年商にも手作業時間の集計にも出てきません。けれど外注で同じものを揃えると約1,050万円かかります(試算)。
売上が増えた理由(+3,800万円)

両社に共通で増えたのが900万円です。春にOTAの広告枠を1つ増やし、客室の写真を撮り直しました。太郎社長も花子社長も同じ手を打っているので、ここは差になりません。差になったのは5つです。1つめ、稼働率が上がって+1,900万円。前の年の通期が62%で、12か月目に太郎の会社が64%、花子の会社が71%になりました。差の7ポイントは年間で767室夜にあたりますが、団体で埋まった180室夜は別に数えるので除いて587室夜。1室あたり平均33,400円で1,961万円。控えめに1,900万円と置きます。上がった理由は3つで、毎日3室止めていた枠を出せるようになったこと、直販の予約がOTAに反映されるまでが3時間半から4分になって止め置きが要らなくなったこと、直近の空室が自社サイトにその場で出るようになったことです。2つめ、料金改定で+390万円。1回90分かかっていた改定が10分になり、月1回だったものを週1回にしました。残室が少ない日を先に上げる運用を4月から12月まで39回まわして、対象は年間で約1,300室夜、1室あたり平均3,000円です。3つめ、団体と合宿で+610万円。10室以上まとめて空いている日をその場で出せるようになり、台帳の上で仮押さえもできます。10月から12月に9件、1件あたり平均10室の2泊で68万円です。太郎の会社は同じ打診に2日かかり、返事を書くあいだに候補の日が売れて、1件失注しました。4つめ、貸切風呂と食事の追加販売で+500万円。直販で予約した人に、宿泊の3日前に案内を出します。貸切風呂は1日18枠あって、枠の稼働が22%から48%に。差の26ポイントは1日4.7枠、1枠3,300円で、8月から12月の153日ぶんが237万円。食事の追加は案内を出せた1,100室夜のうち反応が28%、1件平均8,500円で262万円です。5つめ、宴会場と日帰りの時間枠で+400万円。平日はほぼ空いていた宴会場2つを、時間で貸します。月18件、平均22,000円で8月からの5か月ぶんが198万円。日帰りの貸切風呂と個室休憩のセットが月90件、4,800円で216万円。合わせて414万円を、控えめに400万円と置きます。1,900+390+610+500+400で3,800万円。すべてモデルケースの試算で、枠の稼働と単価は自社の過去の実績から置いています。

浮いた時間(1年目 1,900時間)

月340時間の手作業が、台帳の動いた3か月目から段階的に減って、7か月目には150時間になりました。太郎の会社は5月の連休で355時間、6月に戸田さんが辞めて手で見比べる時間が増えて375時間、11月の紅葉と団体の照会で390時間、12月の年末年始で400時間です。12か月ぶんを足すと太郎の会社4,380時間、花子の会社2,480時間で、差は1,900時間。使い道は正直に置きます。4割の760時間は残業が減って消えました。売上には直結しません。4割の760時間が新しいことで、内訳は宴会場と日帰りの時間枠の立ち上げと運用に約210時間、貸切風呂と食事の追加販売に約180時間、団体と合宿の照会と提案に約150時間、毎週どの日の料金を上げるかを探す運用に約130時間、既存の改善に約90時間。残る2割の380時間は、会議が伸びたり別の作業に吸われたりして、どこへ行ったかわかりません。

状況の指標(開始時と12か月目)

直販比率は、客室の室夜で数えて両社とも前の年が18%です。12か月目に花子の会社が28%、太郎の会社が22%。太郎の会社も上がっています。写真とプランを直し、自社サイトの予約フォームを整えたからで、太郎社長は手を打っています。稼働率は前の年の通期が62%で、太郎の会社が64%、花子の会社が71%。料金を1回変えるのにかかる時間は、両社とも1月が90分です。サイトコントローラーの画面で、日付と部屋タイプを1つずつ選んで入れ直します。花子の会社は4月から10分。太郎の会社は6月に戸田さんの表計算が止まってから150分に増えて、12月もそのままです。作り直しの納品は翌年3月になります。直販の予約がOTAに反映されるまでの時間は、両社とも1月が3時間半で、繁忙日は翌朝でした。花子の会社は4月から4分。太郎の会社は写す担当が代わって5時間に延びました。二重予約は月4件から、花子の会社が0件、太郎の会社は月5件です。4月に写す担当が代わって一時6件まで増え、慣れて5件に戻りました。

下がらなかったもの

OTAの送客手数料は1円も下がりません。ここではモデルケースとして予約金額の10%を置いています。実際の率は契約とプランで変わります。それどころか売れているぶん、花子の会社は太郎の会社より年128万円多く払っています(太郎の会社1,848万円、花子の会社1,976万円)。直販比率が上がったのは、OTAを減らして直販に付け替えたからではありません。OTAはそのままにして、止めていた枠を出し、空いていた日を直販で埋めました。だからOTA経由の室夜も増えていて、手数料の額も増えています。掲載料も下がりません。春に広告枠を1つ増やしたので、両社とも年66万円に増えました。サイトコントローラーは抜きません。OTAへの接続は世の中の話なので、既製品がそのまま担っています。既製の宿泊管理システムも残します。会計と勤怠と給与のソフトは、ENVIRONが作らない領域なので両社とも同じものを使い続けています。人数で払っていたチャットとメモとkintoneを自社サーバに移して、25名で年53万円が消えました。月にすると約44,000円です。これだけでは月12万円の保守の元は取れません。効いたのは、写しと見比べに消えていた時間のほうです。

支出の差(341万円)

花子の会社2,920万円、太郎の会社2,579万円です。ここで数えているのは、システムと外注と、率で取られるものと、事故の後始末だけで、人件費と食材と燃料は入れていません。花子の会社の内訳は、導入まわり200万円(使う方3名までで50万円に、2月にフロントと予約と事務の9名ぶんの設定費45万円、7月に客室と調理と清掃、それに清掃のパートを合わせた21名ぶんの設定費105万円。月額は増えません)、インフラ保守が月12万円×11か月で132万円(部屋と貸切風呂と宴会場の枠が常時動き、客室とプランの画像を大量に持ち、サイトコントローラーとの受け渡しが15分ごとに走るので、標準の月10万円ではありません)、最初の1本の受託280万円(2月に前金140万円、4月に残金140万円)、伴走支援0円、AI利用料18万円(社長と大原さんがPro、4月から社長がMax 5x、9月にDPAが要ることがわかって5席のチーム向けへ。1ドル150円換算)。ここまでで630万円。残りの2,290万円は太郎の会社と同じ性質の支出で、そのうち1,976万円がOTAの送客手数料です。太郎の会社の2,579万円は、人数分のSaaSが116万円(Microsoft 365が25名で63万円、社内チャットが25名で21万円、Notionが10名で20万円、kintoneが10名で12万円)、会計と勤怠と給与が48万円、サイトコントローラーと予約エンジンが46万円、既製の宿泊管理システムが42万円、OTAの掲載料が66万円、送客手数料が1,848万円、二重予約の振替の持ち出しが月に5件ほどで170万円、台風の食材ロスが38万円、12月に外注した表計算の作り直しが180万円、サイトの修正が1回5万円で5回の25万円です。

差引(+1,369万円)

増えた売上3,800万円の貢献利益率を45%として1,710万円。そこから支出の差341万円を引いたものです。客室が増えた分は固定費がほとんど動かないかわりに、食材とリネンと清掃の外注、それにOTA経由ぶんの送客手数料が乗るので40%。貸切風呂と宴会場と日帰りの時間枠は食材が要らないので65%。混ざった状態の平均は46%になりますが、控えめに45%を置きました。累計で見ると、花子の会社が追い越すのは8か月目です。2月から7月までは、花子の会社が最大283万円多く払っている状態が続きます。ここを越えられない会社は、契約しないほうがいいと思います。

作れたもの

大きいもの5本(枠のハブ本体、清掃と客室の割り当て、貸切風呂と食事の追加販売、宴会場と日帰りの時間枠の販売、団体の仮押さえと見積)と、小さいもの22本。大きいもの5本を外注で揃えると、業務のしくみ1本100万〜300万円の相場で約1,050万円です。花子の会社が当社に払ったのは1本目の280万円だけで、2本目からは自分で作りました。ただし伴走支援を付けていないので、2本目が立ち上がるまでに時間がかかっています。5月に2週間かけて作れなかったものが1本あって、それが形になったのは12月でした。小さいものは外注に頼む金額ではないので、太郎の会社には存在しないままです。

外注では頼めなかった、小さいもの(花子の会社にだけあるもの)
  • 明日の朝、何室が早発ちで何室が連泊かを1枚にする表
  • 貸切風呂の空き枠を、客室の内線からそのまま見られる画面
  • 清掃が終わった部屋を押すと、フロントの画面が変わるボタン
  • 厨房が見る、今夜の食数とアレルギーと子ども料理の一覧
  • 送迎バスの時刻と、駅に着く人数を1枚にする表
  • 直前3日の空室を、常連さんにだけ出す案内の下書き
  • 前回泊まった部屋と料理の好みを、予約の画面に出す欄
  • 団体の仮押さえを、期限つきで台帳に置く画面
  • 宴会場の平日の空き枠を、地元向けに1枚で見せるページ
  • 台風のとき、その日の予約者に一斉に連絡する下書き
太郎社長が見積もりを取って、諦めたもの
  • 客室と貸切風呂と宴会場の枠を1本にする台帳(見積420万円・納期5か月。4月に相談し、10月の役員会で保留。翌年に持ち越し)
  • 直販の予約を自社サイトで受けて、そのままサイトコントローラーへ渡すしくみ(予約エンジンの入れ替えで260万円、既存の宿泊管理システムとつなぐ工事が110万円で合わせて370万円・納期4か月。10月の役員会で保留)
  • 清掃と客室の割り当てを画面にするしくみ(見積180万円。パートのアカウントを何人分買うかで話が止まり、着手できず)
  • 貸切風呂の時間枠をお客さまが自分で取る画面(既製の予約システムでは客室の予約とつながらないと言われ、紙の表を続けることに)
  • 残室に合わせて料金を変える案を出す画面(サイトコントローラーの外に持つならデータの受け渡しが別料金と言われ、相談の段階で終了)

2年目と、3年目。

ここから先は物語ではなく、数字だけです。導入費と最初の1本の支払いが終わるので、2年目に支出が入れ替わります。

太郎 年商太郎 支出花子 年商花子 支出
1年目2.86億円2,579万円3.24億円2,920万円
2年目2.93億円2,753万円3.52億円2,347万円
3年目2.99億円2,617万円3.75億円2,467万円
3年の合計8.78億円7,949万円10.51億円7,734万円

年商

花子の会社が、毎年上に伸びていきます。

0億1.25億2.5億3.75億5億2.86億3.24億1年目花子が +3,800万円2.93億3.52億2年目花子が +5,900万円2.99億3.75億3年目花子が +7,600万円
0億1.25億2.5億3.75億5億2.86億3.24億1年目2.93億3.52億2年目2.99億3.75億3年目
1年目花子が +3,800万円2年目花子が +5,900万円3年目花子が +7,600万円
太郎の会社花子の会社

1年ごとの支出

2年目に入れ替わります。導入費と最初の1本の支払いが終わるためです。

0万1,250万2,500万3,750万5,000万2,579万2,920万1年目花子が +341万円2,753万2,347万2年目花子が −406万円2,617万2,467万3年目花子が −150万円
0万1,250万2,500万3,750万5,000万2,579万2,920万1年目2,753万2,347万2年目2,617万2,467万3年目
1年目花子が +341万円2年目花子が −406万円3年目花子が −150万円
太郎の会社花子の会社

手作業に使った時間(1年あたり)

この業務まわりで、社内の3人が手を動かした時間の合計です。

0h1,250h2,500h3,750h5,000h4,380h2,480h1年目花子が −1,900時間4,200h1,500h2年目花子が −2,700時間4,050h1,300h3年目花子が −2,750時間
0h1,250h2,500h3,750h5,000h4,380h2,480h1年目4,200h1,500h2年目4,050h1,300h3年目
1年目花子が −1,900時間2年目花子が −2,700時間3年目花子が −2,750時間
太郎の会社花子の会社

1年目は月ごとの合計です。太郎の会社は6月に戸田さんが辞めて、3つのOTAを手で見比べる時間が増えました。2年目の3月に表計算の作り直しが納品されて少し戻り、後半に枠の台帳が外注で入ってさらに減りますが、予約の写しと清掃の割り当ては残ります。花子の会社は小さい道具が増えるにつれてさらに減っていきます。3年の合計は太郎の会社12,630時間、花子の会社5,280時間。差の7,350時間は、1人分の1年を1,900時間とすると約3.9人分の1年にあたります。

2年目

花子の会社の支出が、太郎の会社を下回る年です。導入費と最初の1本の支払いが終わり、伴走支援はもともと付けていないので、残るのは月額とAIの利用料と、下がらない送客手数料と掲載料だけになります。太郎の会社はこの年、1年目に保留した枠の台帳をついに外注します。420万円、納期5か月。届いたとき、花子の会社は同じものを2年近く使っています。しかも届くのは相談したときの客室30室ぶんの枠で、貸切風呂と宴会場の時間枠は別の見積もりです。止まったままの表計算の作り直しは3月に納品されるので、料金改定は年の途中から戻ります。

3年目

差が固定される年です。花子の会社は2本目からを自分で作るので、外注費はゼロのままです。枠の種類が増えても、台帳に1行足すだけです。太郎の会社は人数分の月額が上がり続け、次は清掃と客室の割り当ての180万円を出します。パートのアカウントを何人分買うかは、今年も決まりません。1年目と同じ景色が、3年目にもあります。

3年でついた差は、粗利で見て
+8,000万円。

すべてモデルケースの試算です。花子の会社の月額は契約の範囲内なら動きません。サーバを大きく使うようになれば見積もりを出し直すので、そのときは増えます。OTAの送客手数料と掲載料は、両社とも売上に比例して増える前提で置いているので、売上が伸びる花子の会社のほうが多く払います。送客手数料はモデルケースとして予約金額の10%を置きました。実際の率は契約とプランで変わります。太郎の会社の支出は、人数分の月額の値上げと、2年目と3年目に1本ずつの外注を見込んだ数字です。伴走支援は3年とも0円で置いています。

工程ごとの、手作業の時間。

1年目、台帳が動いたあとの月あたりの時間です。フロントと予約と事務の8名で分担しています。7行は、1月に両社が同じようにやっていた仕事だけを並べました。太郎の会社の340時間は、6月に戸田さんが辞めて手で見比べる時間が増えて375時間、11月の紅葉と団体の照会で390時間、12月の年末年始で400時間になりました。花子の会社の12月は170時間ですが、この7行の合計は86時間です。差の84時間は1年目に新しく始めた仕事で、宴会場と日帰りの時間枠の受付が30時間、直販が増えたぶんの問い合わせが22時間、貸切風呂と食事の追加販売の運用が18時間、団体の照会と見積が14時間。減った時間の一部が、新しい仕事の手作業に置き換わっています。

電話とメールとFAXで来た直販の予約を、台帳とサイトコントローラーに写す95時間24時間OTA3サイトの在庫と料金を見比べて、入れ直す70時間16時間清掃と客室の割り当てを組んで、紙に刷って配る48時間8時間予約と宿泊管理システムと厨房の食数を突き合わせる42時間12時間キャンセルと変更を4つの経路から拾って、各所に伝える38時間10時間貸切風呂と宴会場の時間枠を電話で受けて、紙の表に書く25時間12時間宿泊者名簿と実績を、月ごとに集計する22時間4時間
電話とメールとFAXで来た直販の予約を、台帳とサイトコントローラーに写す95時間24時間OTA3サイトの在庫と料金を見比べて、入れ直す70時間16時間清掃と客室の割り当てを組んで、紙に刷って配る48時間8時間予約と宿泊管理システムと厨房の食数を突き合わせる42時間12時間キャンセルと変更を4つの経路から拾って、各所に伝える38時間10時間貸切風呂と宴会場の時間枠を電話で受けて、紙の表に書く25時間12時間宿泊者名簿と実績を、月ごとに集計する22時間4時間
太郎の会社花子の会社
340時間太郎の会社 月あたり(試算)
86時間花子の会社 月あたり(試算)
254時間差この時間を何に使うかが、分かれ道になりました

なぜ、差がついたのか。

物語の中で起きたことを、理由の形に並べ直したものです。

01

サイトコントローラーは、抜かない

OTAへの接続は世の中の話です。各社の仕様も締めの決まりも先方のもので、こちらでは決められません。既製のサイトコントローラーがそれをちゃんと担っているなら、そのまま残します。花子の会社も残しました。変えたのはその手前で、客室と貸切風呂と宴会場の枠を1本の台帳にして、直販の予約をそこで受けて、サイトコントローラーへ渡す数を台帳が決めるようにしただけです。渡し方は今までどおりです。

02

止めておいた3室は、台帳がないから止めていた

毎日3室を売らずに置いていたのは、電話の予約を写すのが遅れて二重予約になるのが怖いからでした。反映が3時間半なら止めるのが正しい判断です。4分になれば、止める理由がなくなります。3室を毎日出せるようになったぶんは、そのままOTAにも出ています。直販に付け替えたのではありません。

03

送客手数料は、1円も下がらない。むしろ増える

OTAの送客手数料も掲載料も下がりません。花子の会社は売れているぶん、太郎の会社より年128万円多く払っています。直販比率が18%から28%に上がったのは、OTAを絞ったからではなく、空いていた枠を直販でも埋めたからです。OTA経由の室夜は減っていません。ここを取り違えると、話が合わなくなります。ENVIRONが手を出さない領域です。

04

OTAの順位は、こちらの台帳の外にある

10月にランキングが下がったとき、両社の落ち方は同じでした。ENVIRONに順位を上げる力はありません。差がついたのは気づくまでの日数だけで、太郎の会社が20日、花子の会社が3日です。毎朝の数字に経路ごとの入りが出ているかどうかの差です。打った手はどちらも同じで、写真とプランと連絡でした。

05

料金改定は、90分か10分かで回数が変わる

サイトコントローラーの画面で日付と部屋タイプを1つずつ入れ直すと90分かかります。90分なら月1回、10分なら週1回です。上げられたはずの日が、太郎の会社は連休だけで11日ありました。減ったのは手間で、増えたのは回数です。ただし、どの日を上げるかを探す仕事は人に残ります。花子の会社がそれを画面にしたのは12月でした。

06

台風の夜は、伝える先の数で決まる

キャンセルは電話とOTA3社とメールの4か所から来ます。太郎の会社はそれを紙に書き写して、翌朝の朝礼で厨房に伝えました。伝わったときには仕込みが終わっていて、38万円ぶんを捨てています。清掃のパート8名には連絡が回らず、8人が出勤しました。誰も悪くありません。伝える先が紙と内線しかないだけです。台帳が1本なら、その夜のうちに厨房の食数と翌日の割り当てが変わります。花子の会社のロスは9万円でした。ゼロではありません。

07

パートに配れないところで、情報が切れる

清掃のパート8名にアカウントを配る話は、太郎の会社では毎年出て、毎年見送りになります。8人分で年に96,000円です。金額の問題というより、増やす理由を説明しにくいのだと思います。花子の会社は21名に配って設定費105万円を1度払い、月額は増えませんでした。人数で払っていないので、配っても増えるものがありません。配れたことで、朝の割り当てが48時間から8時間になりました。

08

人が辞めても、止まらない

太郎の会社は戸田さんの退職で、3つのOTAの差分を並べる表計算が止まりました。料金改定は月1回もできなくなり、反映は5時間に延び、復旧に180万円を外注して納品は翌年3月です。何社のサービスに登録していたかの一覧も、誰も持っていませんでした。花子の会社でも同じ月に1人辞めましたが、台帳はサーバの上で動き続け、プランのクセは記憶に、頼み方はチャットの履歴に残っています。ログインを1か所止めて、後任が翌週から同じ画面を開きました。

09

伴走支援を、1年付けなかった

花子の会社は伴走支援を最後まで付けませんでした。旅館の社長は現場に立つので、月に何度も打合せの日を空けられない、というのが理由です。当社は勧めませんでした。付けなくても環境は動きます。最初の1本は当社が作るからです。ただし代償はあります。5月に2週間かけて作れなかったものがあり、それが形になったのは12月でした。7か月遅れています。9月には申込書まで書いて、出しませんでした。伴走支援は要らなくなるのが正解なので、最初から要らないなら、それでいい。要ると思ったら付ければいいだけです。

10

枠は増やせるが、部屋は増えない

客室は30室のままです。建物は建て替えていません。増やせたのは、売れる枠の数と、売れる時間の数でした。貸切風呂の1日18枠、宴会場2つの平日、日帰りの時間枠、団体でまとめて押さえられる日。どれも建物の中にもともとあって、台帳に載っていなかったものです。枠のハブというのは、そういう話です。

システムを買うのではなく、
作れる場所を持つ。

まずは、いま一番手間のかかっている紙を数枚お持ちください。どこに何時間かかっているかを、一緒に見るところから始めます。初回のお打ち合わせと洗い出しは、無償です。
メールには、会社名と、いま一番手間な作業を一行だけ。それで結構です。

株式会社田中大介 代表取締役 伊丹谷 大介
mail@tanakadaisuke.com